敬語:集団としてのおしゃれ [読書(エッセイ・コラム)]
集団としてのおしゃれ1
集団としてのおしゃれ、って、敬語とどう関係があるのでしょうか。
「心の言葉」を、大勢の人が使ったり、使わなかったりしたときの、世の中へ
の影響を、二つの例から考えています。
ここはその一つめ。
「2001年9月11日(略)同時多発テロ(略)、ABC放送は特別番組で「遺族の思い」を特集した。」
「ジェニングス氏(※)は(略)はカメラに向き直ると言った。」
「(略)バーバラ(※2)はビデオを使っ てインタビューしませんでした。また家族に”今のお気持ちは?”とも聞かなかった。」
「私たちABC放送の記者たちは、数年前に話し合って、こうしたときに不幸な人たちにマイクを突きつけるのはやめようと申し合わせたのです。”今のお気持ちは?”なんてバカな(dumbest)質問をするのは」
(中略)
「(日本では)「えひめ丸」のときも池田小学校のときも、「いま、どんなお気持ちですか」のダムベストな声を聞かされたのである。」
「この国は、社会全体が自動制御装置を失ったのであろうか」
(※:研航注:ピーター・ジェニングス氏。アメリカABC放送の看板キャスターだった。ブッシュ大統領が追悼の辞を述べた。) (※2:研航注:バーバラ・ウォルターズさん。全米に名の知れたアンカー・レポーター)
大リーグ放送をみていると、海外のインタビューはレベルが高いのか、ぽんぽんとリズムよく進んでいくのを見かけます。
「心の言葉」をグループでおこなう。 そうすれば、より多くの人に、心の言葉が伝わっていく。
この話は、放送局という多くの人に伝わる具体的な例でした。
集団としてのおしゃれ2
「「タメ語」というのがある。身分の上下関係なしに、友達のような口を利くことである。昔からあった。(中略)クチバシの黄色い学生の間にも伝染して、(中略)」
「「きょうの授業、なかなかよかったすよ」
「怒ったね、教師は。あたりまえである。」
「どんな教師でも、生徒に対しては知識と経験の先達である。
その蓄積したものをカリキュラムとして体系化し、学生が職業についてから困らぬように渡すことを職分の内容としている。
「それを「よかったすよ」と勤務評定 のようにいう。」
「別に学生のほうに悪気があったわけではない。」
「日もすがら夜もすがらタメ語を使っているので、教師という”目上”に対して制御装置が働かなかったのである。」
会社にはいるとよくわかりますよ。
仕事をよく知っている先輩に、
「先輩、なかなかですね」
と言ったら、口ではそうか、とか言っても、心の中で「生意気なやつ」と頭きて教えてくれなくなります。
仕事だから、先輩は後輩に教えて当たり前、なんて思っていると、会社に固有の情報は、参考書も塾もないので、気づけば、会社で「あいつは何も知らない」と言われるやつになってしまうのです。
ちなみに言うと、先生も、この場面で怒れることが大事で、つまり、面倒をみてあげる気概があって、はじめて怒れるわけですが。
で、著者は、この現象について、それほど意地悪な見方はしていません。
「別に学生のほうに悪気があったわけではない。」
「日もすがら夜もすがらタメ語を使っているので、教師という”目上”に対して制御装置が働かなかったのである。」
「つまり、ケイタイとメールのおかげで、知識の幅が限定され、彼らの間には、「知らないこと」が多くなりつつあるのだ。」
え、なんで、ケイタイとメールが…
というのは、今は、
「コミュニケーションのツールが電話かEメールに集中する
(※文=手紙が減っている)、つまり、
(※軽く使えるけど、軽い、あまり丁寧ではないツールだから、というものあって)
人間関係を結ぶ相手が自分と同等か年下の人に多くなる。
勉強でもスポーツでも、自分とドッコイドッコイか自分よりも弱い対象を相手にしていると、自分自身はいつまで経っても成長しないか、ときには退歩するものなのだ。」
:(※)は研航注
上の人とコミュニケーションが不足すると、知識の幅が狭くなってしまう、のは、先に会社の例をあげましたが、あてはまるようです。
最後に、著者は社会的な影響に話をつなげます。
「「知りすぎた不幸」もある
が、それは、大抵の場合、個人の人生に
起こる現象である。」
「「知らなかったゆえの不幸」
は、社会現象として集団の中
に起こるのではないか。」
そして、敬語の社会における意味を結論付けています。
「だからこそ、情報社会の中で、「敬語」はいかに位置づけられるか、という問題が生起する」
前の「心の言葉」で、一人ひとりへの敬語の必要性を語り、
この記事では、大勢の人が敬語の心の言葉を使う必要性を語りました。
次の項でもう一度、個人に戻って、
- どうしたら敬語が学べるか、
- どんな人なら学べるのか、
- 学ぼうとする気持ちは、自分をどう変えていくのか、
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