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敵意ある「密告」のゆくえ(あらすじ) [読書(小説)]

〔序盤〕
いわれのない密告者あつかいを受けた萱野。もとはピストルでオリンピックを
目指すまでの選手だったが、今はそのキャリアを生かすことなく、風俗営業店
の許認可など、警察の中で役所のような仕事をしている。

ある日突然、上司の矢木沢が業者と癒着していることが新聞社に密告される。
確たる証拠もなかったが、二人の過去から誰もが萱野を密告者あつかいする。

二人の間にあった過去とは、、、
かつて、ピストルの上位者である矢木沢が、争っていた恋人美菜子を無断で
の射撃場に入れたことを嫉妬し、萱野は尾ひれをつけて新聞社に密告し、
矢木沢を追い落とした。卑劣さを許せなかった美菜子は萱野のもとを去り、
やがて矢木沢と結婚した。

夫が土日にまで外出するのは浮気だと疑っていた矢木沢の妻美菜子が、再会
した萱野に調査をたのんでいたため、接待の現場をみてしまう。逆に矢木沢に
も気づかれる。そのため矢木沢は今回の密告も萱野であることを疑っていな
かった。美菜子も今の夫である矢木沢を、萱野が再びおとしめようとしたと考え
ていた。

萱野は、八木沢美菜子に潔癖である証をたてるため、真の密告者を探そうと
して、なりふりかまわない行動に出る。恩師だった堀越の娘、幸恵が警察に
いて、自分に思いを寄せるのを都合よく情報源に使う。特ダネをえさに、新聞
記者を協力者とした。

〔中盤〕
裏を探ろうとするほど、叩けばほこりの出る警察幹部から疎ましがられ、陰湿な
警告として、引き出しの中にインクをこぼされたり、果てはおとしいれるために、
銀行口座に勝手に入金されそうになったりして、ついに、事故を起こしてしまう。
自転車を跳ね、彼に不利な目撃証言が出る。

自分が牙を剥いた警察に助ける人は誰もいない。萱野は、この窮地にも、自分
の思いを遂げるため、ひるまなかった。事故証言を故意だと信じ、証言者の身
辺を探る。

ついに、明かりが見えた。全市長選直前に最大のライバルが脱税容疑で検挙
されたことが有利に働き、厳しい選挙戦に勝った広報誌があった。現市長のそば
に写っていたのは、萱野が接待現場でみかけた男、佐久間だった。

負けた選挙候補者から、警察とその男との癒着を聞かされる。ある協会が、
長年警察署長経験者の天下り先になっていた。風俗業界の顔であった佐久
間が、協会に資金提供をしていた。矢木沢は、自分の署長に点を稼ぐため、
佐久間に接触していたのだった。

調査の中で警察手帳の力を再認識し、さらに幹部の腐敗をみて自分が警察の
一員であることを自覚した萱野は、新聞記者と袂をわかち、ひとり自らの潔白を
明かそうと行動にでる。

〔ラスト〕
美菜子のいる前で、自分の潔白と矢木沢の警察官としての罪を明かそうとして、
萱野は驚くべきことに、矢木沢の家に行く。美菜子と二人で矢木沢を待つとき、
初めて、萱野は語れなかったかつての、そしていまも変わらない美菜子への
思いを伝える。

自転車事故の件で逮捕状をとった警察と矢木沢が家を包囲したのを察した萱野
は脱出し、逆に協会に乗り込んだ。佐久間や矢木沢、そして警察OBの前で
すべてを明らかにしようとしたその時、後ろから萱野をなぎ倒したのは、幸恵の
父であり自分の恩師である、堀越警察署長だった。そして佐久間の手下に拷問
にかけられ、やがて銃口を向けられる。

萱野は諦めなかった。すきをみて110番通報する。残された矢木沢に警察の
自覚を思い起こさせ、手下から銃を奪わせる。矢木沢は手下を追い出したが、
それは、萱野への殺意からだった。

萱野は、矢木沢に言う。
「たとえ証拠がなくても、あなたがやったとはっきり感づくものがもう一人いる。」
「彼女がいます」矢木沢の妻美菜子が気づくと。

矢木沢は膝まづき、天井に向かって銃を撃ち、床に投げつける。
「もう終わりだ・・」矢木沢の心には、もともと栄光はなかった。ピストルでの栄光を、
そして自分の出世を、将来の糧にしたいだけだった。
やがて彼は遺書を書き、ビルの屋上から飛び降りた。

萱野は、真の密告者だとわかった堀越の家に乗り込む。そこで聞かされたのは、
まったく想像もつかない事実だった。密告したのは、堀越の娘、幸恵だったのだ。
矢木沢がスキャンダルで今の警察から離れれば、萱野と妻美菜子との距離が
はなれると考えてのことだった。密告が父の汚職の発覚につながりかねないことを
覚悟の行動だった。堀越にとっても、娘の行動は、信じがたかった。

幸恵は、萱野がかつて矢木沢を密告した事実をしらなかった。思いがけず自分
の言動で愛する萱野が疑われることになったことに責任を感じ、警察を辞め、
オリンピック間じかだったピストルチームも離れ、萱野に協力しようとしたのだった。

萱野の密告者探しの動機が、矢木沢美菜子への潔白の証明だったことを知っ
ていた父の堀越は、萱野に殺意をいだいていた。娘の恋焦がれる相手が
「なぜおまえなんだ」と最後までつぶやいた。

矢木沢の遺書に書かれていたのは、妻美菜子への「君をわたしたくない」という
一言だった。美菜子は萱野の気持ちを拒むことを決意していた。

矢木沢は、帰りに待ち構える堀越幸恵に視線を向けず歩き続けた。
もう一度美菜子への「夢」を見ながら。


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