『瀧夜叉姫』普段の生活から異空間に引きずり込まれる [読書(小説)]
少し前の出版・流行になりますが、夢枕獏さんの陰陽師シリーズ最長編『瀧夜叉姫』上下巻を読みました。
仕事に関係のない小説は、じつはこの本(文庫版)が出てすぐ買った2008年以来、読まずにおいておいたことからあらためて気づいたのですが、3年以上ぶりでした。
物語は、陰陽師シリーズらしい異様な京の闇夜をイメージさせる、百鬼夜行のおどろおどろしいシーンから始まります。
ところがすぐにこれらは一つ一つが後のオチの関係するシーンになっていて、その後に続くシーンもあわせて、最後にぴったりとまとまります。
主役は実は、武家時代の到来を予感させる二人で、一人は平将門、もういひとりは、あまりにネタバレなので書きません。
反乱を鎮圧した人々の、直後とその約20年後を描いています。
なので、陰陽師シリーズの主役の二人、安倍晴明と芦屋道満の若い頃も出ていて、安倍晴明が子供ながらに師の賀茂忠之と京の街で百鬼夜行に出会っても最初に気づき落ち着いて対応するシーン、芦屋道満が20歳若くても風体など20年後とさっぱり変わっていないところなど、シリーズのファンも満足です。
あきらかにオドロオドロテーストですが、謎解きものとしての仕立てがよくできているので、平将門の乱とその時代を知るのに、肩の力の抜けたいい入門書かもしれません。
瀧夜叉姫と、平将門の運命のはかなさに、心打たれるシーンもあったり。
ほかのシーンでは、ほんのり恋愛テイストもございます。
それから、平将門の乱を鎮圧した平貞盛の息子が伊勢平氏のはじめなので、大河ドラマ『清盛』へつながる系譜として見るのもおもしろいでしょう。
源博雅も、実在と言われている人物です。
賀茂保憲という、賀茂忠之の息子もでてきます。
それにしても、こんな筋立てですので、読んでいる間は仕事のことも何もかも忘れます。
世界が違いすぎますから。
けっこういい気分転換になるってことを、ことばどおりあらためて、気づきました。
ほんと、いまさら、ですね。
文庫版は、下記です。
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