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「奇跡の人」 [読書(小説)]

奇跡の人 (新潮文庫)

奇跡の人 (新潮文庫)

  • 作者: 真保 裕一
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2000/01
  • メディア: 文庫

「奇跡の人」真保裕一著 読みました。
〔きっかけ〕
以前真保裕一の「ホワイトアウト」を古本屋で見つけて、はまりました。声に出して読むのに、リズム感のよさがピッタリ。そうこうしているうち、日経新聞夕刊にも連載コラムがあり(先月まで)、チェックしていた作家だったので、なんとなく買いました。

〔内容・メッセージ〕
・事故で記憶をなくした主人公が、0から「生きる作法」を身につけていく感動の前半。
・過去の自分を探し、病院→事故→住まい→ご近所→友達→恋人と見つかっていく
アドベンチャーな中盤。
・後半では、「醜い」自分の発見。記憶がクリアされたので、その「醜さ」は持って生まれたか、記憶のない過去の経験から体の奥に刷り込まれたものです。読みにくい部分です。
・ラストで、その「古い」自分の醜さと「新しい」主人公は命がけで闘います。
・見守る「母親」の愛情が涙ぐましくも、力強く心に響きます。

〔感想〕
感情を表現する、言葉を話す、動く、歩く。つらい訓練にひたすら取り組む。こんな前半が気持ちよくて、中盤が展開を楽しめるので、後半のストーカーまがいで冷酷な行動や気持ちが読後感を悪くします。
自分の中にある「醜さ」を見てしまった主人公は、驚きながらも深刻に受け止めて、ラストでは「醜い自分」と抗い、責任を果たそうとして、行動します。

自分の奥深くにある、目を背けたくなる「醜い自分」と闘おうとする姿勢が、前半の生きる基本をみにつける謙虚さとともに、厳しくも明るい印象を受け、読了直後より、しばらくしてから感動しました。

最後に、真保裕一さんは「ホワイトアウト」も「奇跡の人」も文章のリズム感が良いので、声に出して読むにはピッタリです。


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