SSブログ

『連鎖』にくしみでなく、幸せを [読書(小説)]

『連鎖』(真保裕一・講談社文庫)を読みました。

連鎖

連鎖

  • 作者: 真保 裕一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1994/07
  • メディア: 文庫

食品Gメンという、耳慣れない職業の主人公、不正輸入などをあばく仕事なので、探偵ものに
近い迫力があります。観察力、証言を引き出すしかけ、仮説のたてかたなど、刑事
コロンボみたいです。

ある日、食用肉倉庫に農薬がばらまかれる事件が発生。
大学時代の友達に奪われ、結婚した昔の恋人を、奪った数日後、友は突然車で海に
突っ込んだ。記事を書くために、不正輸入を調べていたらしいことがわかる。
次から次へとおきる不可解な出来事、これらはなにか関係が・・・

展開は痛快、不思議がいっぱい、、、でも、メッセージは明確です。

食品関係のスクープを掲載して名を上げた友に嫉妬し、あえて妻を誘い、事件に
巻き込まれた後、さらに負けたくない一心で、捜査を続ければ命がないと暴力団に
脅されても立ち向かう姿は、スマートな小説全体の中で、「いじましさ」を感じます。

結局この事件は、恋人に自殺された娘の父親が、その原因となった相手に復讐
しよとして、多くの人を巻き込んだ、なんとも物悲しい『連鎖』なのでした。
巻き込まれて命を落とした企業人の娘の中学生が、恨みをはらそうと行動した後、
主人公は最後にその悲しい連鎖のむなしさを、事件を明らかにすることによって
伝えるのです。

食品輸入という国際社会を感じさせる背景の中で、このメッセージは、ちょうど
イスラエルと周辺諸国の「やられたらやり返す」戦争の連鎖を思い起こさせる、
考えさせられる作品でした。


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。