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『病(やまい)の神様』は親切丁寧 [読書(エッセイ・コラム)]

『病(やまい)の神様』(横尾忠則著・文芸春秋)を結構大笑いしながら読みました。

病の神様

画家の横尾忠則さんが、世界中を飛び歩き、そこかしこで突然悲鳴を上げる
体と対話しながら、病気や怪我にまつわるエッセイを一冊の本にまとめました。

きっちり10年に1回怪我をするジンクス、偶然お見舞いに来てくれた高倉健さんが
病室で倍賞千恵子さんと一緒になって、3人で新聞に載ったこと、健康サンダルを
愛用していた三輪明宏さんと意見があって大喜び、などなど、病気や怪我だけで
よくこれだけ話があるなと、横尾さんのまた違う才能に驚きます。

特に私が面白かったのは、マロンクレープの話。ミラノのスカラ座で、「ベルギー国立
二十世紀バレエ団」の舞台美術を担当するため、パリのシャンゼリゼで食事をしていたら、
激しい頭痛と高熱に襲われた。ところが、

「その時ふと、マロンクレープを食べたら直るような直感が働いた。」
ので、「食べないほうがよい」(と普通言いますよね)という奥様に

「マロンクレープが啓示のようにぼくの頭の中に降りてきたんだ!」
とわめいて買いに行かせるのでした。

「大好物である。食べたいという欲求がある以上、回復の兆しかもしれない」
「ペロリと食べたぼくは、(中略)あんなに頭がガンガンしていたのもぴたりと治まった。」

「体の中からエネルギーが湧き出し、逆にじっとしておれなくなった。」
「さあ、深夜映画を見に行こう」・・・「行かなきゃ死ぬ」

とまで回復してしまったのだそうだ。

「病気になると食欲がなくなるが、それでも食べたいものが、時にはある。
(中略)そういうときは何でもいい。好きなものを食べれば病気など吹っ飛んでしまうのである。」

(『甘いものは命の源』より)

横尾忠則さんといえば、このエッセイにあるだけでなく、寺山修二さんと野外パフォーマンスの
劇団を主宰したり、日本の前衛芸術の最高峰の方です。

思うに、体の声に素直なのではないでしょうか。だから、ちょっと痛いとか、ちょっとつらいとか
をすばやく感じ取って、病院にかけこんだり、長期入院することもあれば、「これで直る!」と
天啓のようにひらめくのではないでしょうか。

横尾さんほどの方ですから、そこらのサラリーマンとは比較にならないくらい働いていらっしゃる
のでしょう。病院の個室で元気になると、絵を描き始める方ですから。

だから、それなりに体に負担をかけていてあたりまえ。芸術への感受性と同じく、病をたくさん
感じ取り、体の声を無視せず、長期休養したりする生活があるから、さらに
「この本の題名に反して」そのパワーが増しているのでしょう。


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