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『囲碁の人ってどんなヒト?』穏やかな囲碁棋士の人柄 [囲碁]

ふと、囲碁の関連本でプロ棋士に焦点をあてた本を買ってみました。


囲碁の人ってどんなヒト?―観戦記者の棋界漫遊記

囲碁の人ってどんなヒト?―観戦記者の棋界漫遊記

  • 作者: 内藤 由起子
  • 出版社/メーカー: 毎日コミュニケーションズ
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 単行本



依田紀基九段のまっすぐ人柄が印象に残るのですが、おもしろかったのは、 石倉昇九段が負けて泣いた話。
著者と食事の際、前日の河野臨天元との碁を解説しながら、 「全く予想していなかった手、地としてはほとんど得をしていないけれど厚く、四方八方に光る手」 を打たれて 「ボクは計算ができる手しか思いつかない。こんな手、一生思いつかない」 と言って、九段は鼻をすすり、眼鏡をとって涙を拭きはじめたそう。 あとからその話を聞いた小林光一九段が 「負けて泣くなんて、石倉もまだまだ根性があるじゃないか」 と見直したというふうな口調だったそう。


石倉昇さんは、アマチュア出身で、初心者・初級者にわかりやすく教えるヒトとしては、梅沢由香里さんと双璧です。
現に二人で、東大教養学部で囲碁講座の講師をして、半年かそこらで全く囲碁を知らなかった学生を最高四級(ゴルフで言えば100を切る腕前)まで伸ばした実績があります。

前の記事で取り上げた、
「碁」でグングン育つ!子どもの脳と心

にかかれているのですが、プロ棋士は師匠から「考えるな」と言われるそうです。感覚で判断しろと。
囲碁の競技としての頂点にいる方たちは、左脳を使わずに次の手を決めているらしい。

これはよほど若い時から頭に囲碁の形がインプットされていないと、できないことですよね。
石倉さんは、子供の頃は趙治勲さんと遊んでいたりしたように、院生だったのですが、途中で普通の学生やっていたんですね。それで東大出て、社会人になってから一念発起してプロ試験に合格したという異色の棋士。

こんな経歴だからこそ、アマチュアの考え方をわかるから、わかりやすく教えてくださるのだと思います。

「一流プロになるには」という項で、羽根泰正九段が
10代のうちにどれだけ真剣勝負の経験を積むかで、その棋士の将来が決まるというのです。そのためには一刻も早くプロにさせることが大切。院生やアマチュアの身分ではいくらプロと打っても、真剣勝負にはなりにくいですよね。やはりプロとプロという対等の立場で手合い(試合のこと:研航註)をして、挫折もし、修羅場をくぐり、と経験を積むことが、将来花を開かせる大きな要因だと力説されていました。

という記事から、しかし、石倉九段は最近こそ名人戦や棋聖戦リーグには出てきませんが、九段という十分一流で、アマチュアを入門させるという考えてみればもっとも囲碁界を盛り上げる要素を最高に引き出せる能力を培ったわけで、ここまであわせて超一流ではないでしょうか。

こう考えると、やはり一度囲碁をやめて、慶應出てからプロになり、女流棋聖を二期続けて獲得、そのあいだに東大・東邦大の講師をはじめ、アマチュアの指導に奔走している梅沢由香里さんのものすごさが、クラクラします。

この本にも梅沢由香里さんのエピソードが載っていて、
囲碁界や日本棋院、とくに普及のことを由香里さんは人一倍気にかけていて、「私にできることなら、微力ながら」と言いながらいろいろ考え、一生懸命努力をしています。 (略) メールなどのやりとりをしていて印象的なのが、 「感謝、感謝です」 という言葉がしょっちゅう現れることです。由香里さんは本当に心からそう思っているのだと思います。みんなの支えがあってこそ、と感じておられるのでしょう。


それからちょっと興味深かったのが、「囲碁と将棋」
女流棋士の手合いで、対局者二人が車中、仲良く隣同士で座り、夕飯も一緒。対局が終わって帰るときはまた一緒、と言うことはよくある風景です。  将棋の矢内理絵子女流四段とお食事したとき、この話が出たら、
「信じられない。将棋界ではありえないかも。」
と言っていたのが印象的でした。
(略)
勝負の性質が碁と将棋では違うからかな、と私は思っています。
将棋はいわゆる「勝着」というのがよくあるそうで、また、必ず敗者が「負けました」と頭を下げて決着します。
囲碁は負けても自分のせい。「敗着」は必ずといってあるのに、はっきりとした「勝着」はなかなかありません。林海峰先生も「囲碁は負けてもらうゲーム」とおっしゃっていました。
 自分のせいですから、だれもうらみません。小林泉美さんは
「負けると、相手を尊敬しちゃうんですよね」
と言っていたこともあります。


負けると相手を尊敬する、、、これは、人生を謙虚に、そして、自分を伸ばしていく、けっこう大きなポイントではないかと、思います。
囲碁は、こういう良さがあるのかもしれません。

すみません、将棋のよさはまた別にあるようで、私はわかっておりません。

依田九段のことを書かないと、もったいない気がするので、ひとつ。
レンブラントの「夜警」があるので有名な国立博物館に入ろうとすると
「レンブラントって、何?」
と聞かれました。
私は、
「画家……」とこたえました。
(略)
「へー、そうなんだ。内藤ちゃん、何でも知っているねえ」
(略)絵を見て回っていると、
「僕、もっと明るい絵が好きだな。夕日より朝の太陽がいいね」
と依田さん。ずっと後ですが、息子さんに「太陽」くんと名付けたのも、うなずけます。


ひとつと言って、もう一つ。
あるとき依田さんから、
「詰碁とかやっている?」
と聞かれました。
「そんな暇ないよ」
と答えると、
「暇なんていくらでもあるでしょ」
「例えば?」
「……信号を待っているときとかさあ」
びっくりしましたね。プロはそんな時間でも碁のことを考えているのかと。


詰碁が頭に入っているそうです。我々素人にできることと言えば、ポケットに詰碁の薄い本を入れておくくらいでしょうか。

危ない気もするのですが、最近は携帯を見ながら階段を降りている人も多いので、仲間かな?

囲碁の世界は、勝負の世界であり、実を取る世界なので、必要以上に派手さがないので、いわゆる「地味」です。

武宮正樹九段は、別格ですが…

それでいて、囲碁自体が人を育ててくれるようで、ドロドロしたところはすべて碁盤の上で解消しているので、プロ棋士の人柄はサラリーマンのドロドロしたところがなく、さっぱりしていて親しみやすい、といったところでしょうか。


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るんたん

万年20級囲碁はいいですよねぇ~
だいぶ古い本ですが、おススメの本です。
狐狸庵先生のこう打てば碁が下手になる―遠藤周作対局集 (単行本(ソフトカバー))

笑えます、そしてもっと囲碁が好きになります。
もっと勉強しよう!とも思います。
ポケットには「15級をめざす次の一手問題集」!3回目
これは石倉さんの「簡単な問題を繰り返し」を真に受けて実践中。

でも私はちーっとも勝てませんね、いやはや。

by るんたん (2008-04-24 16:03) 

るんたん

ちがうちがう!
万年20級囲碁
がいいんじゃなくて
万年20級でも
囲碁はいいですよねぇ~
って書くはずでした
私だって20級は脱したい。せめて19路盤で・・・悲願です。

失礼しましたー

by るんたん (2008-04-24 19:42) 

研航

るんたんさん、どうも、
囲碁、どーしたらあんなに知的にこう、打てるんですかねー。
私も19路盤は息切れするし、ついこないだ9路盤から13路盤にあげたところです。ところがちーっとも勝てない。
勝てなくてくやしいから打つのか、打ちたいから打つのか、わからなくなりますが、それでもしつこくやってます。
狐狸庵先生の本、読んでみますね。教えていただいてありがとうございました。
by 研航 (2008-04-25 00:35) 

るんたん

どういたしましてー。
囲碁がこんなに中毒性があるとは思ってませんでした。知ってたら始めなかったぞ・・・って気分。

家族で始めた囲碁ですが、私はハナから戦力外。お願いして打っていただいている立場なので、打てるだけでうれしい。サイみたい?なんちゃって
父子戦は将棋では余裕だったダンナも囲碁では互角、子供の頭の柔らかさに、本読みあさって威厳を保つのに必死(笑
人間と打つ碁は碁盤を介したコミュニケーション。勝ち負けはともかく「いい」碁が打ちたいという気持ちになります。
研航さんとウチのボクとの対局が実現する日が楽しみです。
ではまた。
by るんたん (2008-04-25 21:53) 

研航

たびたび、、、
一回たくさん置き石してもらって、勝てるところから「減らす?置き石?」って言えば、ムキになってそのままいくか、勝負を計算して減らすことを選ぶか、、囲碁のおもしろいところですよ。

ウチのボクとの対戦、いいですねー。
by 研航 (2008-04-28 19:52) 

人生

ぜひぜh、囲碁きっずで、実現してほしいです!
観戦させてください^^v

9路→13路→19路への移行をどう、スムーズに行うか・・・・
考えています^^;

HP上で実現していきたいなぁと思っています。
まだ、できてないですけど、活用して頂ければと思います。

初心者さんの意見が集まるサイトにしたいな、と思ってます。
ちょくちょく、よらせていただきます。
今度ともよろしくです^^
by 人生 (2008-06-17 12:21) 

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